1. 本町で起業する人が創業計画書でつまずく理由

公庫の創業計画書をダウンロードして、書きかけのまま画面を閉じた——そんな夜が続いている方は、少なくないはずです。

20年のキャリアを持つビジネスパーソンでも、いざ「数字の根拠」を問われると、指が止まります。本町での創業を本気で狙うなら、計画書の質が融資の可否を分ける最初の関門です。

この記事を読み終えたとき、審査担当者が何を見ているかが分かり、自分の経験を「通る言葉」に変換する手順が手元に揃います。

1-1 商社マンでも数字の根拠で迷う実情

相談の場面でよく出るのが、「事業の自信はあるのに、計画書に書くと途端に弱く見える」という声です。

20年の営業経験は、紛れもない強みです。ただ、その強みを「月商◯万円を見込む根拠」として言語化するのは、まったく別のスキルになります。

現場では、売上予測の欄に「努力次第で伸ばせる」と書いてしまうケースが目立ちます。審査担当者の目には、これは根拠のない楽観に映ります。数字には必ず「なぜその額か」を添える必要があります。

1-2 公庫の様式を前にして手が止まる瞬間

日本政策金融公庫の創業計画書の様式は、A4両面という見た目のシンプルさとは裏腹に、記載すべき情報の密度が高いです。

「必要な資金と調達方法」の欄は特に難関です。設備資金と運転資金の区別、自己資金の出どころの説明、借入希望額との整合性——これらをひとつのフォーマットに収めなければなりません。

もっとも、手が止まる原因の多くは「何を書けばいいか」より「何が正解か分からない」という不安です。正解は一つではありませんが、通る書き方には共通した型があります。

1-3 独りよがりに見えてしまう計画書の特徴

一人で書き上げた計画書が落ちやすい理由は、書き手の「常識」が読み手に伝わらない点にあります。

業界経験があるからこそ、前提として省いてしまう説明がある。その省略が、審査担当者には「説明できない箇所」として映ります。

ポイントは、第三者が読んで「なるほど」と思えるかどうかです。自分では当然のことでも、文章として書き出すと初めて穴が見えてきます。添削を受ける最大の意義は、まさにこの「見えていない穴を塞ぐ」作業にあります。

2. 創業計画書の基本構成と各項目の役割を理解する

創業計画書の書き方を正確に押さえるには、まず書式全体の「設計思想」を知ることが先決です。日本政策金融公庫が公表している創業計画書の様式には、大きく8つの記載項目が設けられています。これらは単なる情報収集の枠ではなく、審査担当者が「この人に貸しても大丈夫か」を判断するための論理の流れに沿って並んでいます。

構造を理解せずに埋めていくと、個々の項目は書けても全体の整合性が崩れがちです。結果として「数字が合わない計画書」「動機と事業内容がバラバラな計画書」が出来上がります。各項目の役割を先に把握しておくことで、記載の方向性がぐっと定まります。

2-1 8項目に込められた審査担当者の意図

日本政策金融公庫の創業計画書は、おおむね次の8項目で構成されています。

項目番号

項目名

審査担当者が見ているポイント

1

創業の動機

事業への本気度と継続意欲

2

経営者の略歴等

裏付けとなる経験・スキル

3

取扱商品・サービス

市場性と競合優位性

4

取引先・取引関係等

売上の確度と信用力

5

従業員

体制の現実性

6

お借入の状況

返済能力と信用リスク

7

必要な資金と調達方法

資金計画の妥当性

8

事業の見通し

収益性と返済可能性

上の表を縦に読むと、「人→事業→お金」という順序で評価軸が移動していることが分かります。審査担当者はまず「この人が信頼できるか」を動機と略歴で判断し、次に「事業が成立するか」を商品・取引先で確認し、最後に「返済できるか」を数字で検証する——この流れで読むのが実務の慣行です。

見落とされがちですが、項目の順番自体にも意味があります。「動機」が最初に置かれているのは偶然ではなく、担当者が面談で最初に確認したいのも「なぜこの事業をやるのか」だからです。動機が薄いと、後半の数字をいくら丁寧に書いても全体の印象が弱くなります。

加えて、「取引先・取引関係等」の欄は、飲食業や小売業より法人向けBtoBサービスで特に重要度が高まります。本町でコンサルや専門サービス系の開業を検討しているなら、既存の顧客候補や発注見込み先を具体的に書けるかどうかが、通過率を左右する分岐点になります。

2-2 通る計画書と落ちる計画書の分岐点

相談の場面でよく出るのが、「一生懸命書いたのに落ちた」という声です。内容の充実度より、「整合性が取れているかどうか」が審査の可否に直結しやすいと実務では感じます。

たとえば、資金調達の欄に「設備資金800万円、運転資金200万円」と書いてあるのに、収支見通しの欄では月商100万円を想定している——このケースでは、設備規模に対して売上が小さすぎると判断される場合があります。担当者は各欄を個別に見るのではなく、「7番と8番が整合しているか」を必ずチェックします。

一方で、通りやすい計画書に共通するのは「根拠が一枚岩になっている」点です。売上予測の前提が取引先欄の顧客リストと連動していて、必要資金の内訳が設備の見積書と一致している。こうした「縦のつながり」があると、担当者が追加質問をする必要が減り、面談がスムーズに進みます。

ポイントは、数字の大きさより数字の一貫性です。売上予測が強気でも、その根拠が各所に分散して書かれていれば整合性は保てます。逆に控えめな数字でも根拠が弱ければ、かえって疑問を持たれることがあります。

落ちる計画書に多いもう一つの特徴は、「抽象的な表現で逃げている」点です。「ニーズが高まっている」「他社にはない強みがある」という言葉だけでは、担当者には何も伝わりません。「本町エリアの法人数はおおむね◯千社前後と言われており、そのうち自社がターゲットとする規模の企業は◯割程度と推定している」——このように、ご自身なりの数字で説明する姿勢が評価につながります。

2-3 事業計画書との違いと使い分け方

「創業計画書」と「事業計画書」は混同されがちですが、用途が異なります。整理すると、それぞれの位置づけは次のとおりです。

書類名

主な提出先

目的

形式

創業計画書

日本政策金融公庫

融資審査

公庫所定の様式

事業計画書

補助金事務局・投資家・銀行

事業性の証明・資金調達全般

自由形式が多い

創業計画書は、公庫が定めた書式に沿って記入する「所定の書類」です。記載できる情報量が限られているため、補足資料(売上根拠の試算表や見積書など)を別添することが実務では一般的です。

その一方で、事業計画書は自由度が高い分、「何を書けばよいか分からない」という状況に陥りやすい書類です。ただ、自由形式だからこそ業種や規模に応じた深掘りができます。たとえば補助金申請では、審査機関ごとに「何ページ以内」「この項目は必須」といった独自の記載ルールが設けられていることが多く、それに沿った構成が必要になります。

実務で見ていると、最初に公庫の創業計画書を丁寧に仕上げた人は、その後の事業計画書の作成がスムーズになる傾向があります。なぜなら、公庫の書式を埋める作業自体が「自分の事業を構造的に整理する練習」になるからです。まず所定の書式をきちんと完成させ、そこで整理した数字や根拠を自由形式に転用する——この順序が、最も効率のよい使い分け方といえます。

もっとも、融資と補助金を同時に申請する場合は、双方の書類で数字の前提を統一することが必須です。公庫に提出した計画書と、補助金申請の事業計画書で売上予測が食い違っていると、どちらかの審査で疑念を持たれる可能性があります。書類が複数になる場合ほど、数字の整合性管理を意識的に行う必要があります。

創業 計画 書 書き方の図解

創業計画書の基本構成と各項目の役割を理解する

3. 「創業の動機」と「経営者の略歴」を説得力ある文章にまとめる

創業計画書の書き方で、審査担当者が最初に読み込むのが「創業の動機」と「経営者の略歴」の2項目です。数字が並ぶ資金計画より先に目を通す担当者も多く、ここで「この人は信頼できそう」と感じてもらえるかどうかが、その後の審査の空気を左右します。

実務で見ていると、この2項目を「自己紹介欄だから軽く書けばいい」と判断して、数行で済ませてしまう方が少なくありません。もったいないと感じます。審査担当者の視点からすると、この欄は「この人が失敗しないための根拠」を探す場所です。経歴や動機の書き方一つで、信用力の印象は大きく変わります。

3-1 20年の営業経験を強みに変換する書き方

営業職としての経歴を「強み」に変えるには、職種名だけでなく「何を・どのくらいの規模で・どんな成果を出したか」まで落とし込む必要があります。たとえば「専門商社で20年、営業職として勤務」では情報量が少なすぎます。「産業資材の専門商社で20年、法人向け新規開拓を担当。在職中に年間売上目標を継続して達成し、主要取引先を10社以上開拓した」という粒度で書くと、担当者の解像度が一気に上がります。

審査担当者が経歴欄で確認したいのは、主に3つです。

確認ポイント

担当者が見ていること

書き方のヒント

業種・業務の一致

今回の事業と職種経験がつながるか

担当した商材・業界を具体的に記載

数字で示せる実績

「できる人」の裏付けがあるか

売上目標達成率・担当件数など

マネジメント経験

人・チームを動かせるか

部下の人数・プロジェクト統括歴

表の内容をご自身の経歴に当てはめて、埋めてみてください。すべてを完璧に埋める必要はありませんが、「業種・業務の一致」だけは必ず満たしておきたい項目です。

ここで意識したいのは、「過去の職歴」と「これから始める事業」の線がつながっているかどうかです。B2B向けの営業経験があるなら、法人顧客への提案力・関係構築力が強みとして機能します。逆に、まったく異なる業種での創業を目指す場合は、その「なぜ転換したか」を動機欄で補足する一文が必要です。

3-2 動機に一貫性を持たせる時系列の整理

「創業の動機」は、感情的な言葉よりも「経験→気づき→行動」という流れで書くと、一貫性が出ます。担当者が読んで「そりゃ独立するよな」と思えるストーリーが理想です。

具体的には、次の3段階で整理するとスムーズです。まず「何を経験したか(過去)」、次に「そこで何を感じ、どんな課題を見つけたか(転換点)」、最後に「だから自分がこの事業を立ち上げる(結論)」。この流れが崩れると、動機が「なんとなく独立したかった」に見えてしまいます。

実際の相談の場面でよく出るのが、「動機欄に夢や熱意を書きすぎて、根拠が薄い」というケースです。熱量は大切ですが、担当者が求めるのは「この人が成功する合理的な理由」です。感情表現は一文に留め、残りは事実ベースの経緯で埋める方が説得力を持ちます。

たとえば、20年の商社営業で「顧客企業が欲しがる専門サービスが市場にない」と気づいた、という経験があれば、それは強力な動機の起点になります。「私が独立を考えたのは、長年の営業活動を通じてXXXという市場ニーズを繰り返し感じてきたからです」という一文は、感情論ではなく経験に根ざした判断として読まれます。

もっとも、創業動機と事業内容が完全に一致しない場合もあります。そのときは「動機が間違っている」わけではなく、「つなぎ方が足りていない」ことが多いようです。時系列を書き出して、前職での経験→転機→事業アイデアの順に並べてみると、抜けている説明が見えてきます。

3-3 人脈・取引先を具体名で示す効果

見落とされがちですが、「既存の人脈や見込み顧客」の記載は、創業計画書の中でもとりわけ審査担当者の目を引く箇所です。売上予測の数字は仮定に過ぎませんが、「すでに声をかけている取引先がある」という事実は、売上実現の確度を大きく高めます。

具体的には、「前職時代からお付き合いのある法人顧客・3社からサービス提供の打診を受けている」「業界団体を通じた人脈があり、見込み案件が複数ある」といった記載が有効です。固有の社名を出す場合は、あらかじめ先方の了承を得ておくことが前提になります。了承が取れない場合は「業種」と「規模感」で表現する方法もあります。たとえば「大阪市内の中堅製造業者2社、導入に前向きな反応を確認済み」という書き方です。

ここで一つ、実務上の注意点があります。人脈・取引先の記載は「あると強い」一方で、「書いたのに実績に反映されなかった」となると面談で突っ込まれます。面談では「その取引先は今どういう状況ですか」と確認されるケースがあるため、記載するならその後の進捗を追える状態にしておくことが重要です。

加えて、人脈の記載は「経営者の略歴」欄とも連動します。前職で培った業界内のネットワークが、そのまま見込み顧客や紹介ルートにつながると示せれば、略歴と動機と販路見通しが三点セットで一致した計画書になります。これが「独りよがりではない計画書」の骨格です。

審査担当者は毎日多くの計画書を読んでいます。だからこそ、経歴と動機とビジネスの根拠が一本の線でつながっている書類は、それだけで読み手の印象に残ります。「自分の経験がどう事業に活きるか」を整理する作業は、融資申請のためだけでなく、創業後の事業運営にも直結する思考プロセスです。

創業 計画 書 書き方の図解

「創業の動機」と「経営者の略歴」を説得力ある文章にまとめる

4. 数字の根拠で勝負する資金計画と収支見通しの作り込み

創業計画書の書き方で、多くの申請者がもっとも苦労するのが「資金計画」と「収支見通し」のパートです。動機や経歴はある程度文章で補えますが、数字の根拠はごまかしが利きません。審査担当者はここを最初に読む、という声も聞かれるほど、数字のパートは評価の核心にあります。

見落とされがちですが、資金計画で問われているのは「いくら必要か」ではなく、「なぜその金額が必要なのか」です。この視点のずれが、通る計画書と落ちる計画書を分ける最大の分岐点と言えるでしょう。

4-1 自己資金500万円の見せ方と評価軸

自己資金は、単なる「手元の金額」ではありません。審査担当者にとっては、申請者の「本気度」と「リスク管理能力」を測るものさしです。

日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金と融資希望額の比率が審査上のひとつの目安になります。一般的に、自己資金が融資希望額のおおむね3分の1以上あると評価されやすいと言われています。500万円の自己資金で1,000万円の融資を希望する場合、比率はちょうど1対2。この水準は、多くの創業案件で採用される標準的な範囲に入ります。

ただ、金額の比率だけが評価軸ではありません。「その500万円がどこから来たか」が同じくらい重要です。

自己資金の出どころ

評価

補足

長期間の計画的な積み立て

通帳の履歴で確認可能

退職金・企業年金

源泉徴収票や退職証明で裏付けられる

直近の大口入金(出所不明)

「タンス預金」とみなされるリスクあり

親族からの贈与・借入

中〜低

贈与なのか借入なのかで評価が変わる

表の通り、評価が高いのは「時間をかけて貯めた資金」です。通帳に半年〜1年以上の積み上げ履歴が残っていると、審査担当者が数字を追いやすくなります。

実務で見ていると、退職金を受け取ったタイミングで申請する方が多いのですが、そのまま通帳に入れておくだけでなく「退職金○○万円を創業資金として充当する」と計画書内に明記することで、説明の筋が通ります。親族からの支援がある場合も、「贈与」か「借入」かを明確にして記載しておくと、面談時に不要な疑念を持たれずに済みます。

4-2 1,000万円調達の内訳を分解する手順

「1,000万円融資してほしい」という数字を、そのまま書いても審査は通りません。「何にいくら使うのか」を設備資金と運転資金に分けて、根拠とともに示す必要があります。

まず、費用の性質を2つに整理します。設備資金は開業前に必要な初期投資、運転資金は開業後の日常的な資金需要です。本町でオフィスや店舗を構えるケースでは、内装工事・什器・保証金が設備資金の主な項目になります。一方、家賃・人件費・仕入れなど、毎月かかる費用の数カ月分が運転資金の目安です。

具体的には、次のような分解の手順が実務では有効です。

  • 設備資金:内装・リフォーム費、什器・備品、PC・ソフトウェア、物件の敷金・礼金など初期費用の見積もりを1項目ずつ積み上げる

  • 運転資金:月次の固定費(家賃・人件費・光熱費など)× 立ち上がり期間(おおむね3〜6カ月分が目安)

本町でレンタルオフィスではなく賃貸物件を選ぶ場合、保証金が月額賃料の6〜12カ月分程度になるケースも珍しくありません。この金額を設備資金に計上し、見積書や物件資料を添付することで「数字の根拠」が一気に具体性を帯びます。

ポイントは、1,000万円という総額から逆算するのではなく、個々の必要費用を積み上げた結果として1,000万円に至る、という順番で書くことです。逆算で作った計画書は、面談で「なぜこの金額ですか」と問われたときに答えが出てきません。

もっとも、積み上げの結果が計画書の希望額と少し違う数字になることもあります。その場合は数字を合わせるより、積み上げた金額を素直に記載するほうが、審査上の説得力は高まります。

4-3 売上予測を客単価×席数で積み上げる

収支見通しで最も問われるのが「売上予測の根拠」です。「月商○○万円を見込む」と書くだけでは、担当者は納得しません。「なぜその数字か」を積み上げ方式で示すことが、損益計画に説得力を与えます。

基本の公式は「客単価 × 客数 × 営業日数」です。サービス業やコンサルティング系の事業なら「案件単価 × 月間受注件数」に読み替えても構いません。大切なのは、数字のひとつひとつに「なぜそう見込むか」の根拠を添えることです。

たとえば、本町エリアでBtoB向けの専門サービスを展開するケースを考えてみます。

項目

想定値

根拠

案件単価

30万円前後

同業他社の市場相場・自身の前職単価を参考

月間受注件数

初年度2〜3件

既存の人脈からの紹介を見込む

想定月商

60〜90万円

上記の積算結果

損益分岐点の固定費

月50万円前後

家賃・通信費・その他合計の概算

このように表で整理すると、売上予測と損益計画のつながりが一目で見えます。審査担当者が「数字の流れ」を追いやすくなり、返済計画の実現性も自然と伝わります。

ここで多くの方が犯しがちなミスが、初年度から楽観的な稼働率を設定してしまうことです。たとえば、「月間20件受注できる」という前提を初年度から置くと、審査担当者は「根拠は?」と問いたくなります。むしろ初年度は控えめな数字にして、2年目・3年目に向けて段階的に伸ばす想定にしたほうが、計画の信頼性は上がります。

実際のところ、売上予測を「最低ライン」「標準」「上振れ」の3パターンで試算しておくと、面談での質問にも即座に対応できます。提出書類には標準を記載しつつ、最低ラインでも返済が賄える損益計画にしておくことが、返済計画の現実性を担保する最低条件です。

数字の根拠を一つひとつ丁寧に積み上げた計画書は、それだけで「この人は準備している」という印象を与えます。ご自身の事業モデルに当てはめながら、数字を組み立ててみてください。

創業 計画 書 書き方の図解

数字の根拠で勝負する資金計画と収支見通しの作り込み

5. 本町という立地を計画書でどう武器に変えるか

創業計画書の説得力は、事業内容だけでなく「なぜその場所で始めるのか」という立地の根拠にも左右されます。本町は大阪・御堂筋沿いの代表的なビジネス街であり、選んだ理由を数字と言葉で裏づけられるかどうかが、審査担当者の印象を大きく変えます。漠然と「一等地だから」と書くのではなく、エリアの顧客特性と自社の強みを結びつける視点が必要です。

5-1 商圏分析と本町エリアの顧客特性

本町エリアは、専門商社・コンサルティング会社・金融機関などのオフィスが集積するエリアです。日中の就業人口は本町・淀屋橋・北浜を合わせると相当数にのぼるとされており、BtoB型のサービス業や士業、コンサルティング系の創業と相性がよいといわれています。

注意したいのが、業種によって「本町の強み」は異なる点です。たとえば、対面相談が主軸のコンサルティング業なら、ターゲット層の企業が徒歩圏内に多い点は明確な優位性になります。一方、ECや完全リモートの事業では、本町である必然性が薄く、むしろ固定費の重さがリスク要因として見られる場合もあります。

商圏分析の書き方として実務でよく使われるのが、「ターゲット顧客が何社・何人いるか」を具体的に見積もる手法です。たとえば、御堂筋沿いの半径500m以内に中堅企業が何社あり、そのうち自社サービスの見込み客になりえる業種はどれか——こうした積み上げを計画書に入れると、審査担当者に「この人は市場を調べている」という印象を与えやすくなります。

大阪市の統計情報や、独立行政法人中小企業基盤整備機構が公開している地域経済データなどを参照しながら、数字に根拠を持たせることをおすすめします。詳しくは大阪市の公式ページや中小機構のサイトで最新データをご確認ください。

5-2 コワーキングか賃貸かの判断軸

本町での拠点選びは、創業期の資金繰りに直結します。以下の表は、コワーキング・レンタルオフィス・賃貸事務所の主な特徴を整理したものです。ご自身の事業フェーズに当てはめて判断の参考にしてください。

項目

コワーキング/シェアオフィス

レンタルオフィス(個室)

賃貸事務所(テナント)

月額費用目安

数万円前後

5〜15万円前後

15〜30万円以上(本町周辺)

初期費用

少ない(敷金なしが多い)

中程度

大きい(敷礼・保証金など)

住所の信用度

事業用住所として使えるか要確認

多くは登記・郵便受け取り可

高い

スケール変更

柔軟に縮小・拡大できる

比較的柔軟

解約に時間とコストがかかる

向いている事業フェーズ

創業直後・実績形成期

顧客を招く機会が月数回程度

専用スペースが事業の必須条件

※費用はあくまで目安です。物件や契約条件によって大きく異なります。最新の相場は各物件の公式情報でご確認ください。

ここで見落とされがちなのが、「融資審査では賃貸契約の有無が加点要素になる場合がある」という点です。日本政策金融公庫など一部の審査では、事業実態が確認できる拠点として賃貸契約書の提出を求めるケースがあります。ただし、創業前の段階で高額テナントを確保すると、毎月の固定費が財務計画を圧迫します。

ひとつの現実的な選択肢として、「まずレンタルオフィスで創業し、売上が安定したら賃貸事務所に移行する」という段階的なアプローチが挙げられます。計画書にもこの移行シナリオを記載することで、「身の丈に合った資金運用ができる経営者」という印象を与えることにつながります。むしろ最初から大きなテナントを構えようとする計画よりも、現実的な軌道修正を見越した計画のほうが、審査担当者に好意的に受け取られる場合が多いようです。

5-3 物件審査と融資審査を同時に通す段取り

本町での創業を目指す場合、物件審査と融資審査がほぼ同じ時期に重なることがあります。この二つは別々の手続きに見えて、実は互いに影響し合います。段取りを間違えると、どちらも宙に浮いたまま時間だけが過ぎてしまう——相談の場面でよく耳にするケースです。

基本的な流れは次のとおりです。

  • Step 1:融資の仮打診を行い、「いくら借りられそうか」の感触を得る

  • Step 2:その金額をもとに、賃貸事務所の初期費用・月額固定費を試算する

  • Step 3:物件オーナーや仲介会社に「融資審査中である」ことを事前に伝え、契約タイミングを調整する

  • Step 4:融資承認後に賃貸契約を締結し、公庫に契約書写しを提出する

ここで重要なのは、Step 1 を先行させる点です。融資額が確定しない段階で物件を押さえようとすると、手付金や仲介手数料が無駄になるリスクがあります。加えて、物件オーナー側も「融資待ち」の申込者に長期間物件を抑えることを嫌がるため、スケジュールのすり合わせが欠かせません。

計画書には、この段取りを「資金調達スケジュール」として明記することをおすすめします。「〇月に融資実行→〇月に賃貸契約締結→〇月に営業開始」という時系列が書かれているだけで、計画の具体性と実行可能性が格段に上がります。立地戦略は単なる「場所の選択」ではなく、資金計画・収支計画・事業開始時期と一体で設計するものです。本町という選択に説得力を持たせるためにも、この連動した描き方を意識してみてください。

創業 計画 書 書き方の図解

本町という立地を計画書でどう武器に変えるか

6. 提出前に必ず行いたいセルフチェックと専門家添削の活用

創業計画書の書き方を学んでも、仕上げの段階で見落としを残したまま提出すると、せっかくの内容が評価されません。完成度を高める最後の工程こそ、審査の通過率を左右する分岐点です。

書き終えた直後は「うまくできた」と感じやすいもの。ところが一晩置いて読み返すと、数字の辻褄が合っていなかったり、動機と事業内容がかみ合っていなかったりすることに気づく場合が多いようです。提出前のチェックを軽く見ないでください。

6-1 矛盾と数字ズレを潰す7つの確認項目

審査担当者が最初に見るのは「話の筋が通っているか」です。個別の数字よりも、計画全体の整合性を重視するケースが多いと言われています。

下の表は、提出前に必ず確認したい7つの視点をまとめたものです。ご自身の計画書と照らし合わせながら使ってみてください。

#

確認項目

チェックの視点

1

資金の合計が一致しているか

「必要な資金」の合計と「調達方法」の合計が一致しているか

2

売上予測の根拠があるか

客単価・想定件数・稼働日数から積み上げた数字になっているか

3

経費の計上が漏れていないか

家賃・人件費・通信費など固定費を全て拾えているか

4

返済額が収支に反映されているか

融資の月次返済額を経費に含めた上で黒字になっているか

5

動機と事業内容が一致しているか

「なぜこの事業を選んだか」と「何を売るか」が矛盾していないか

6

経歴と事業に関連があるか

略歴に書いたスキル・経験が、事業の強みとして活きているか

7

数字の単位・期間がそろっているか

月次・年次が混在したまま比較していないか

とくに4番は見落とされがちです。売上から経費を引いて黒字でも、融資の返済額を加えると赤字になる——という計画書は、実務の相談でもしばしば出てきます。返済額は「経費」の欄ではなく「返済」として別立てで示す様式もあるため、様式の指示をよく読んだ上で確認してください。

加えて、数字の単位が「万円」と「千円」で混在しているケースも散見されます。細かいようですが、担当者は大量の書類を読んでいます。単位のブレは「雑な申請者」という印象を与えかねません。

6-2 面談で聞かれる想定質問への備え方

日本政策金融公庫の創業融資では、書類審査を通過すると面談(審査面接)があります。計画書を提出して終わりではなく、口頭でも説明できるかどうかが問われます。

現場でよく耳にするのが、「書いた数字の根拠を口頭で説明できなかった」という失敗談です。たとえば「月商200万円と書いたのに、どうやってその数字を出したか答えられなかった」というケースは、審査担当者の信頼を大きく損ないます。

想定される質問は、おおむね以下の3領域に集中する傾向があります。

  • 動機・経歴:「なぜ今の会社を辞めて独立するのか」「この事業に必要な経験はあるか」

  • 数字の根拠:「売上見込みはどう計算したか」「損益分岐点はどこか」

  • リスク管理:「売上が計画を下回ったとき、どう対応するか」「自己資金以外に後ろ盾はあるか」

準備の仕方はシンプルです。計画書を手元に置き、各項目について「なぜこの数字なのか」を声に出して説明する練習を繰り返す。1〜2分で答えられるようになれば、面談での動揺はかなり減ります。

もっとも、自分だけで練習すると独りよがりな答えになりがちです。家族や信頼できる知人に審査担当者役を頼み、想定外の質問を投げてもらうと、弱点が浮き彫りになります。それが難しい場合は、後述の認定支援機関に面談対策まで依頼するのが確実です。

6-3 認定支援機関を伴走役に選ぶ基準

認定支援機関とは、中小企業支援法に基づき国が認定した専門家・機関のことです。税理士・中小企業診断士・金融機関などが登録しており、創業計画書の作成支援や添削サービスを提供しているところも少なくありません。

ただ、認定支援機関であれば誰でも同じかというと、そうでもないようです。登録者数は全国で数万機関に上ると言われており、得意分野や支援スタイルは機関によって大きく異なります。

選ぶ際に確認したいポイントを3つ挙げます。

創業融資の支援実績があるか。 税務申告を主業務とする税理士は多いですが、融資申請に精通しているかどうかは別の話です。「創業融資の支援を何件手がけてきたか」を率直に聞いてみましょう。

丸投げか、伴走型か。 代わりに書いてもらう「代行型」は、面談本番で詰まるリスクがあります。一緒に考えながら計画書を作り込む「伴走型」のほうが、最終的な通過率も高い傾向にあります。自分の言葉で説明できる計画書でなければ、面談では通用しません。

本町など事業予定エリアの商圏感覚があるか。 大阪市内でも、本町周辺のオフィス需要やコワーキングの相場感を知っている支援者とそうでない支援者では、アドバイスの精度が変わります。地域密着の支援機関を選ぶ理由はここにあります。

認定支援機関の検索は、中小企業庁が運営する「認定経営革新等支援機関検索システム」から地域・業種を絞り込んで行えます。詳細は中小企業庁の公式ページでご確認ください。

セルフチェックで土台を固め、専門家の添削で客観性を加える。この二段構えが、創業計画書を「通る書類」に仕上げる最短ルートです。

創業 計画 書 書き方の図解

提出前に必ず行いたいセルフチェックと専門家添削の活用

7. 本町で伴走型サポートを受けて創業を成功させるために

創業計画書の書き方を知ることと、「通る計画書」を仕上げることは、別の話です。

7-1 一緒に作り込む支援と丸投げ代行の違い

伴走型のサポートが価値を持つのは、審査官が読む視点を借りながら、自分の言葉で計画を語れるようになるためです。代行で完成した書類は、面談で崩れます。「この数字の根拠は?」と問われたとき、自分の口で答えられるかどうかが通過の分岐点です。

7-2 初回相談で持参すべき資料リスト

相談の場面でよく出るのが「何を持っていけばいいか分からない」という声です。最低限、通帳の写し・職務経歴メモ・想定物件の賃料情報の3点を用意してください。数字が揃っているほど、初回から踏み込んだ議論ができます。

7-3 本町で創業計画書を磨き上げる次の一歩

本記事の内容を、ご自身の事業内容に当てはめて書き出してみてください。一人で止まったら、認定支援機関や創業支援窓口への個別相談を使うのが最短ルートです。本町エリアでの開業サポートを行う窓口は、大阪市の公式サイトや日本政策金融公庫の相談受付から確認できます。

本記事は執筆時点の情報に基づいています。最新の制度・融資条件は各機関の公式情報でご確認ください。